12月のブログ:クラウドコンピューティングはエココンピューティング
自動車産業とビジネス環境の変化
昨年夏からのガソリン価格急騰、そしてその後、秋に米国を発端とした世界的な金融危機の影響を受けて、多くの消費者の間で自動車の買い控えが起きました。広がりつつある景気の低迷に加えて、過剰な石炭の燃焼が地球温暖化の原因になるとの国民の意識が高まり、ドライバーたちは自動車の運転を止めて、車の相乗りなど他の輸送代替手段を利用するようになりました。特に5年前から人気で普及してきたガソリンを大量消費するSUV(スポーツ多目的車)はリプレイス、または使われなくなっています。気候変化(温暖化)に対する国民の意識がビジネス環境に大きな変化を引き起こしているのです。今回のブログでは、これらの変化が近い将来IT業界へ、特にこの15年間で超大規模まで広がってきたクライアントサーバーコンピューティングへの影響について言及していきたいと思います。
GM(ゼネラル・モーターズ)やクライスラーといった米国の自動車メーカーは、過去15ヶ月間で売上高が激減し、大幅な業績悪化となりました。今年に入ってこの2社は破産法を申請し、公的資金の支援を受け入れ、目下経営改革の真っ只中にあります。今年からハイブリッド車の本格的な販売を開始し、消費者のほうもハイブリッド車に対して反応が良かったのですが、多くの人々が電気自動車の出荷を期待していることを背景に電気自動車開発にも注力しております。ハイブリッド車は、より効率的で、かつCO2排出量の少ない電気自動車が世に出回るまでの過渡期の解決手段であると言えます。電気自動車を生産することによって自動車産業は自らを改革しようとしていますが、現在の事業者にとっては、このような事業転換が今後どうなるかはまだ不透明であり、一部の企業は生き残ることができても、他の多くの企業の生き残りは難しいのではないかと思います。
米国の多くの都市では、自家用車が通勤の唯一の手段です。日本のJRような公共交通機関と比較してみると、JRは毎日数百万人の利用者に共有され、利用者が自分の乗車距離に応じて代金を払うしくみになっています。通勤のための一人の乗客によって排出される二酸化炭素(CO2)排出量を比較すると、電車は自家用車よりCO2排出量がはるかに少なく、非常に高い効率を実現しています。しかしながら、自家用車がJRシステムの利用できないようないわゆる「ラスト・マイル」において利用される場合は、自家用車自体が公共交通システムの一部となり、全体的なCO2排出量を比較的少ないものにします。
グーグル、セールスフォース・ドットコム、アマゾン・ドット・コムといった世界規模のサービスも、毎日24時間常に数千万人のユーザーに共有されるシステムです。実際の利用料に応じた料金体系に基づく巨大なインフラシステムであり、日本のJR公共交通システムに相当するものです。大規模であるため、ユーティリティクラウドと呼ばれてもいいと思います。 IT業界も気候変化による大きな影響を受けて、新たなビジネス環境に誘導されています。以下で、電気料金の値上げ及び国民意識の高まりが企業のユーティリティクラウドへの主要な転換をもたらすという予測について述べていきます。
気候変化によるIT産業の変化
気候変化のリスクに関する国民意識が全世界で高まっており、今月デンマークコペンハーゲンで行われている国連気候変動枠組条約、或いはその後の各国同意で、国ごと、産業ごと、最終的に企業ごとのCO2排出量の上限を規定する予定です。CO2排出量が規定される上限を超えた会社は、税金を払うか、或いは排出量が上限を超えていない他の企業から排出枠を取得するといった対応を求められるにようになるでしょう。石炭の燃焼によって電気を作っている電気事業者は、主要なCO2排出源となり、従ってCO2排出量の規定上限及び排出枠取得で急騰するコストに直面すると思われます。COP15及びその後の対策によって、電気価格はおそらく急激に上昇すると思われます。米国では近い将来、電気価格がこれまでの30%も上昇すると予測されています。急騰する電気価格によっては、企業は不要な利用を減らして、消費電力を削減するよう駆り立てられることになるでしょう。
ITサーバーが利用される時間は一日に数時間しかないにも関らず、毎日24時間ノンストップで動かなければなりませんので、高電気消費量リストの高いランクにあります。そのため、企業のITサーバーは必然的にリプレイスのターゲットになっています。企業のITサーバーにある根本的な問題は、ITサーバーがただ一つのアプリケーションをシングル・テナント・モードで実行し、その結果、ITサーバーのCO2排出量がクラウドユーティリティと比べるとかなり高くなるということです。その一方、自家用車が公共交通機関の補完として利用される場合と同様に、ITサーバーがユーティリティクラウドへ接続する場合、またはクラウドでは実行できないアプリケーションを実行するために利用される場合は、ITサーバー自体がクラウドの一部となり、全体的なCO2排出量は比較的少なくなります。
企業がITサーバーを買わなくなる、あるいは使わなくなると、ITサーバーのメーカーは一年前の自動車メーカーのように厳しい改革を行わざるを得ないと思います。企業の経営環境に迫り来る電気料金の高騰によって、一部のメーカーは仮想化サービスプロバイダとして自分自身を変えようとしています。仮想化ソフトウェアは、サーバハードウェアをマルチ・テナント・モードで利用することを可能にし、効率を大幅に引き上げます。しかし、プライベートクラウドと呼ばれる仮想化ソフトウェアは、一日に数時間しか利用されないレガシーソフトウェアの実行を続けています。プライベートクラウドでは、複数の企業がサーバーを共有している関係上、アプリケーションの共有も高まっております。しかしながら、いずれの場合も、レガシーソフトウェアを使用しているので、仮想化クラウドはユーティリティクラウドに比べて、あまり効率的ではありません。仮想化クラウドはある意味でエンタープライズアプリケーションがユーティリティクラウドへ移行する、或いは作り直される過渡期の解決手段です。企業ITサーバのように、仮想化クラウドがユーティリティクラウドへアクセスするために使用される場合は、仮想化クラウド自体がクラウドの一部となり、比較的その効率性は引き上げられるようになります。
ビジネス環境変化とサーバアプリケーションベンダー
また、新たなビジネス環境が企業ITサーバソフトウェアのメーカーにも大きな影響を与えるでしょう。マイクロソフト及びその他のレガシーソフトウェアメーカーは、ITサーバソフトウェアの販売で年間何百億ドル以上の収益を得てきましたが、今後はユーザの買い控えにより、苦しい変革を余儀なくされていくと思います。ハードウェアメーカーが仮想化クラウドのプロバイダに転換しようとしていますが、レガシーソフトウェアのメーカーはどのように反応するでしょうか?マイクロソフトはクラウド・ユーティリティ・プロバイダーへ変身しようとしています。来年からマイクロソフトは新たなクラウドサービス「BPOS」の提供を開始します。15年間もパッケージソフトウェアを開発、販売してきた会社がいきなりクラウドのプロバイダーになれるのでしょうか?自動車の製造、販売をやってきた会社がいきなりJRのような通勤ユーティリティの提供業者になれるのでしょうか?
過去15年間、クライアントサーバコンピューティングそして何億台のエネルギー効率の悪いITサーバが増殖し続けてきましたが、今や地球にとっては、クラウドコンピューティングこそが必要となっています。クライアントサーバコンピューティングから莫大な利益を得てきた会社は自分自身を改革しなければなりません。その中で一部の主要な企業は生き残ることができても、他の多くの企業の生き残りは難しいのではないかと思います。